裁判員裁判12−50
「自白調書の読み方」2012.8.24
                 2011年1月〜  宮道佳男

 自由心証主義の深読み間違い

 裁判官が証拠を自由に判断できるという自由心証主義があります。この証拠はこのように解釈しなければならない、という法定証拠主義ではないのです。旧約聖書の、二人以上の証人が登場したとき、その証言を採用しなければならない、とは違うのです。
 証拠法・採証法則とは自由心証主義を制限する為にあります。自白調書に任意性、信用性の二重の縛りを掛け、自白に補強証拠を要求しすることは、裁判官の自由思考を制限するのが目的です。

 松川事件最高裁判決の垂水少数意見
 証拠から遊離した想像創作を重ねた。眼光紙背に徹す、と自慢していると陥穽に落ちる。自由心証主義は証拠に裏打ちされたものでなければなりません。

「具体的かつ詳細」の落とし穴

 よく判決は自白調書が「具体的かつ詳細だから信用できる」と書きますが、取調官は現場を見ているから、書けるのです。そして裁判官を欺せるのです。
 松川事件第二次最高裁判決多数意見「たしかに、赤間の自白調書を一読すると、その自白は具体的かつ写実的であり、たとい取調官の暗示や誘導に基づくものがあったとしても、実際には犯行に関係ない者が果たしてこのような自白をなしうるものであろうかとの感を抱かせるものがある。とくに赤間が当時いかに若年で思慮分別が足りなかったにしろ、死刑又は無期懲役の刑罰の予想される重大な犯罪について、自分だけではなく、他の7.8人をも共犯者に巻き込むような嘘を、逮捕後旬日を出でずしてするというようなことがありえようかとの感は、赤間自白に対して誰しもが一応は抱くところであろう。しかし、この直感にたよりすぎることは極めて危険であつて、赤間自白以外に、赤間と本件犯行とを結びつける確証があるかどうかを、なお慎重に検討する必要がある」