アメリカ下院慰安婦決議 20070820 
アメリカ下院で従軍慰安婦決議がなされた。日本が大戦中軍隊に付属する売春設備で兵隊の相手に慰安婦を使っていたことを非難し、日本政府の公式謝罪を求めるものである。
この決議には複雑な要因があり、単純にアメリカによる日本叩きと評価して単純な反発を示すべきではなく、冷静な判断が必要と思う。
阿部総理は参議院選挙大敗で頭に血が昇っているから、アホな反発発言をしないかと苦になる。

複雑な要因とは何か。
1、アメリカに日本に対する不満、対日政策の変更という雰囲気がある。共和党ブッシュ大統領の任期切れが迫り、ブッシュ大統領の最大の政策であるイラク攻撃に対する国論の変更が始まっている。日本はアメリカのイラク攻撃に賛同し、自衛隊をイラクに派遣し、同盟国の義理を果たしたと思うのは日本人だけである。戦闘部隊を派遣し、戦死者を出した英国とは違うのである。アメリカには日本に対する不満が根強く蔓延しているのである。
2、アメリカの北朝鮮政策は北朝鮮の核兵器廃止が主目的であり、拉致事件の解決は二の次以下である。アメリカは北朝鮮と核兵器の廃止だけで手打ち式をしたいのであり、拉致問題を絡める日本とは距離を置きたいのである。
北朝鮮自身も、韓国も中華人民共和国も同じである。拉致事件を棚上げにして北朝鮮の国際復帰を企画している。北朝鮮が本心で言いたいことは、拉致拉致と非難されるが、慰安婦強制連行のテーマで拉致を帳消しにしたいのである。
アメリカ議会運営は、ロビー活動によってなされる。ロビーイストと呼ばれる職業の人がおり、多くは弁護士であり、有償で法案の成立を請け負う職業集団であり、依頼者の依頼により議員に対して活発な陳情活動をする。
今回の慰安婦決議には、中華人民共和国、北朝鮮、韓国のロビー活動がなされたと思う。統一協会教祖文鮮明は本来韓国系であるが、北朝鮮とも濃厚な付き合いをしている。ヒトラーとスターリンの友好と同じ。北も南も反日ということでは大団結できる。中国も乗り気となる。
反日日本人という種族もいるが、正確に言うと、日本帝国主義反対日本人である。
これらが雑多に乗り合わせしてロビー活動をしたのである。

3、阿部総理も日本国民も意外感があったと思う。
慰安婦問題と言うが、韓国の村から女性を強制拉致して慰安所に連行し、おどしつけて売春させたことはない。戦前は売春防止法がなく、売春宿は合法であった。慰安婦は職業として公認されていたのであり、給料を支払っていたと言いたいのである。
反日日本人の中には、韓国まで行って村から強制連行されて慰安婦にさせられたという女性を捜し出して日本の裁判所に提訴させた例があったが、事実は複雑である。
私が知ることは、村から強制拉致して来た、新潟の海岸にいた女子中学生を拉致して船で運んだという例はない。女衒と呼ばれる慰安婦斡旋を職業とする人がおり、これが韓国の村々を回り、儲かる仕事だと吹聴して女性を集め、船に乗せて戦地の慰安所へ送り込んだのである。
中には、何も知らなかった女性もいたと思う。しかし嫌ならば断れるし、銃剣を突きつけて売春を強制したということはない。聞いた話では、この職業をいやがる女性がいたので、慰安所を監督する憲兵隊士官が慰安所経営者に申しつけて慰安所を退職させたとの話も聞いたし、本当に騙して連行した事例の場合には、日本の裁判所が経営者を監禁罪で処罰した例も知っている。
だから、処罰された例があったということは、事実としてはあったということではあるが、違法行為として取り締まりされていたということである。 
あったことは、慰安所と言う売春設備が公然と存在し、そこに雇用された慰安婦と言う売春婦が金銭の対価で春を売っていたということである。世界最古の職業である。
慰安婦は他の職業と比較すれば高給取りであったが、慰安婦と言えども負け戦につきあうと酷い目に遭う。敗戦により中国で貰った軍票は無価値になるし、裸同然で帰国船に乗り、無一文で韓国へ帰国せざるをえなかった。サイパン・フィリピンへ行った韓国慰安婦はもっと気の毒で、軍隊と共に戦場を転々とし、戦場の露と消えた人もいる。
帰国できた慰安婦はその後醜業に従事していたこと故に差別を受けたということは想像できる。しかしそれは軍隊の慰安婦になろうが、赤線吉原遊郭の接客婦になろうが同じことである。

当時は合法なことであったから、非難される謂われはないと反発する向きもありうるが、アメリカ下院決議はそれを根拠にはしていない。
アメリカという国は、過ちを犯すが、その後正すことを忘れないのである。この特殊性を見なければならない。
アメリカは昔開拓時代インディアンの土地を奪い殺戮したが、20世紀に入ると、大いに反省し、インディアン居住区を設定して白人によるインディアン迫害を禁止し、反対に保護するようになる。今ではインディアンの土地から出土する恐竜の化石骨を売買するについても連邦政府の承認事項となっている。すこぶるお節介ぶりである。インディアンが白人に騙されて土地を失ってはいけないかに連邦政府が監督するとの理由である。
奴隷制についても同じである。南北戦争以前は奴隷制は合法であったが、南北戦争の白人何万人の犠牲の上に奴隷制は違法となり、奴隷は自由解放されたのである。
太平洋戦争時代、アメリカに滞在するドイツ人イタリア人は収容されなかったが、日本人は砂漠の強制収容所へ収容された。戦後日本人がこれは民族差別だとロビー活動をしたところ、議会と政府とその非を認め、日本人に補償する法律を作り、補償を実行している。
アメリカ下院の慰安婦決議もおなじようにもので、過去に合法であった売春について違法を論じているのではなく、現在からして慰安婦制度をどう評価すべきかを問うているのである。
他国の制度なのに、いやにお節介なことだと、異論も出ようが、アメリカとはそういう国なのである。内政干渉ではないか、とも思えるが、アメリカは州の中が内政干渉、州際は国際なのである。国たる州の連合がユナイテッドステーツオブアメリカである。
アメリカの今回の慰安婦決議は、アメリカ議会が在米日本人の強制収容に対する補償法を可決したこととパラレルに考えるべきである。

日本世論では、慰安婦が何だ、ならば、原爆はどうなる、原爆投下非難決議を国会でしたらどうか、との反論も出る。
日米同盟の基調から言えば、このような感情的反発は無益である。
阿部総理は、首相談話を発表し、過去に日本が公娼制度を合法としていたことは文明の観点から許されなかった、特に戦時に於いて従軍慰安婦は戦争の犠牲となり多大の損失を余儀なくされたことに遺憾とする、と言えばよい。
日本の裁判所で争われている慰安婦の裁判は個別に示談解決すればよい。
阿部総理は訪米したとき、オレゴン州ブティレークビューを訪問するとよい。昭和20年5月5日日本軍の森林火災を目的とする焼夷弾付きの風船爆弾が太平洋を越えて飛来し、ハイキングに来ていた主婦1人子供5人が犠牲にあっている。太平洋戦争で、アメリカの非戦闘員の市民が死亡した唯一の例である。
阿部総理は、この犠牲者の墓に献花し、墓所管理事務所へ行き、墓所の整備費用の足しとして使ってくれ言いながら、気持ち多額の献金をするとよい。
広島とか長崎とか、言う必要はない。
アメリカの議会は考え始めるし、アメリカ大統領は訪日のとき何をすべきか考えるであろう。
西ドイツのブラント首相は1970年ポーランドのワルシャワゲットーのユダヤ人虐殺記念碑で膝まつき頭を垂れた。ユダヤ人虐殺は非戦闘員への大量組織的虐殺と言う意味で、アメリカの原爆と同じである。アメリカ大統領が謝罪する日を待つ。