宮道佳男先生(26期 宮道佳男法律事務所)
 司法反動は許せないと青法協に!尋問も週2回こなした元青法協名古屋(現あいち)支部長。         
聞き手  北村  栄(名古屋第一法律事務所)
小林哲也(名古屋E&J法律事務所)

5 後輩へのメッセージ  


北村: 次に、我々後輩に対して、こういうことを頑張って欲しいというメッセージはありますか。

宮道: 後輩の人に対しては、今は非常に気の毒だと思うんだ。この最悪な司法反動の中で、食える食えないの問題まで発生している。だから、いろいろ応援してやりたいと思ってる。それで、1年生がそこにいるから、1年生と一緒に法廷に行っている。この間も一緒に法廷に行って尋問させた。尋問させて、下からわしがカードを出す。尋問の足らないところとか注意点を指導してやる。だから、うちは単に失業弁護士救済所で事件を回しているだけではない。私が一緒に行って尋問の練習をやってやらなきゃいけないなぁと思ってる。研修所では尋問の練習なんてやってないでしょ。尋問がやっぱり弁護士の一番の腕の見せ所だよ。書面じゃ無いよ、尋問だよ。尋問で負かしてしまうことがあるもの。私も40年、いや、39年やってきて培っているから、尋問のコツというものは教えてあげられるね。

北村: そういう話もっと聞きたいですね。

宮道: 尋問術というのは、非常に整理がしづらいんだ。経験の所産だからね、例えば、有名な反対尋問の技術という本があるじゃない。あれも読んだけれど、これはこのケースの話だな。僕のコツはやっぱり調査ですよ。例えば、証人尋問をやるときは、証人に関するいろんな資料を全部頭の中に入れる。例えば、刑事事件だとその人の員面、検面調書から、前回法廷供述から関連証人の証言を全部頭の中に入れる。全部入れてから本人に聞く。聞いていくと違うことをぽっと言ったりする。今言っているのが本当なのか、前に員面調書で供述していたことが本当なのかといって攻めていく。そうすると、矛盾が出てくる。それで、何故矛盾が生まれたのか、それはあなたの一人勝手なのか、誰かの誘導なのか。こういうことですよ。

北村: 民事も基本的に一緒ですかね。

宮道: 民事も一緒です。民事も刑事も一緒ですよ。あとは資料読みです。だから、重大な証人尋問の前夜にホテルに泊まるのは、全部これを頭に入れるためです。終わったら消去を実行します。もう覚えていません。次の事件が待ってます。そういうのを並行して何件も持っていましたから。そして、次回の前夜にまた読み直します。

北村: 週に2回尋問されていたんですか。

宮道: そうですよ。昔は週に2回の尋問は当たり前でした。もちろん簡単な事件もあります。交通事故の事件で証人尋問をやるのは簡単ですけど、それでも実況見分調書とか全部頭に入れておかなきゃダメでしょ。現場も見に行かなければならないし。私が大矢和徳先生と一緒に尋問に立ったのは最初の何ヶ月間くらいしかない。私に尋問技術を教えてくれたのは相手の先生です。相手の先生がある証人に尋問するでしょ。上手に真実を聞き出し、矛盾を突く。それを私が目の前で見てるわけだ。こちらの証人がみるみる崩されていく。それが一番の勉強でした。相手の先生に教えてもらいました。

北村: その事件は自分が知ってるからより分かりますよね。

宮道: 尋問の上手な先生がいっぱいみえるものですから。その先生も思いつきでやってませんよ。基本的な資料や証拠をもとにして攻めてきます。そんなの突然作ったような証拠をバンと出しはしないよ。ちゃんと型にはめた落とし穴方式で攻めてきます。こちらが反対の席で座っていて、脂汗が出てくるようなことがあります。これは負けたとかね。だから、勝って勝って負けて、勝って勝って負けての生活をずっとやってきて、最近10年間は和解優先主義ということです。もう胃が痛くなるんだもの。そのせいで胃がんになった。

北村: 弁護士という仕事は、本当にストレスを発散するものを持たないといけないですよね。

宮道: そうだよ。勝敗にこだわらない性格の人が一番良いんだけど、それだと勝てないよ。勝負師にならないといけない。本当に勝負にこだわる勝負師にならないと、難しい事件は勝てません。

北村: 先生、ありがとうございました。勉強になりました。

宮道: ありがとう。お疲れ様でした。