裁判員裁判12−100
「自白調書の読み方」2014.1.23
                 2011年1月〜  宮道佳男
 32、自白調書を書いた取調官は一人か
 取調官は普通二人で1チームを編成して取調に当たる。二人はボケと突っ込み役を分担し、脅かしたり、なだめたりする。ところが複雑な事件になると、この二人1チームが複数編成されることがある。1チームの中に悪役と仏役がおったり、チーム毎に悪役と仏役を分担することもある。公判供述や自白調書の中には仏役の取調官に対する感謝の念とか出てくることがある。裁判官はそこだけを見て任意性有りと速断する傾向がある。取調官全員の態度、特に取調官各人の取調能力・性格を見なければ速断してはならない。
 八海事件 二度目の控訴審無罪判決
「被告人らの自白供述が変転し且つ相互に食い違い、又一方に於いて吉岡の供述とも抵触することは、基本となる吉岡の供述それ自体が変転したこと、係官の取調方法特に圧力のかけ具合及び誘導の程度、巧拙に関する個人差、被告人らのこれに応接の態度ないし性格の強弱等がからみあった結果生じた現象である。
 被告人らの各自白調書が下調べ担当者とは別異な係官によって調査作成されたものであることは、被告人らの供述によってもこれを知るに十分であるが、同時に又該調書作成者による取調が、刑事等による前掲不当な下調べと殆ど時を接してなされたものであることも証拠上否定し得ないところであるから、このような条件下に作成された被告人らの各自白調書はその任意性について疑問なきを得ない」