裁判員裁判12−105
「自白調書の読み方」2014.2.25
                 2011年1月〜  宮道佳男
第5、最後は、裁判員監視下の法廷直接主義、マイコート、大衆向け積極弁護

1、マイコート
 裁判官は良くマイコート、私の法廷という言葉を使います。アメリカの裁判官が良く使っているからです。弁護人が裁判官の訴訟指揮に対して異議を連発し、揉めたとき、裁判官は「マイコート、私の法廷」と言って、胸を張ります。
 アメリカ憲法が裁判官に与えた、裁判官の独立を表現する言葉なのです。裁判官の自尊心の源なのです。
 被告人が自白調書では犯行を認め、法廷では否認する。裁判官が有罪にしたいときは、自白調書を採用し、法廷供述を信用しがたいと切り捨てる。その理由を色々付けます。文才のある裁判官ならなんとでも書けます。
 裁判官は密室の取調室を見ていません。しかし、法廷を見ています。法廷は裁判官のマイコート、仕事場なのです。取調室は取調官の仕事場です。
裁判官は法廷にいる被告人に尋問できます。何故否認に転じたのかを尋問できるのです。一方、取調室にいる被告人に尋問できません。どんなやりとりの結果、自白が生まれたのか、目撃していません。法廷では、否認に転じた理由を被告人に尋問して、その供述態度を目撃できるのです。
 法廷で、被告人が否認に転じた理由を供述し、裁判官は反対尋問できます。その反対尋問にも拘わらず、被告人は否認を維持した場合、有罪にしたい裁判官は「法廷で殊更罪責を免れようとしている」と判決します。裁判官が被告人と論争して、被告人に言い負かされた場合には、腹いせに重罰にします。
 被告人が裁判官の反対尋問にも負けずに、否認を貫き通し、否認をウソと証明できる証拠がない場合、裁判官は無罪判決をすべきです。それが、裁判官のマイコートの自尊心なのです。
 裁判官は、彼の否認供述を論破できなかった、ことを尊敬すべきなのてす。
 取調室での自白がウソなのか、法廷での否認がウソなのか、法廷にいる裁判員にしっかり見極めて貰いたいのです。裁判員には、取調官との連帯感がありません。裁判官にもないことを祈りますが、法の番人の公務員同業者意識の存在は拭えません。
 私の法廷での、被告人の否認、反対尋問に揺らぎない否認の維持、否認がウソであることを証明する証拠の不存在は、無罪判決にすべきです。それが、名誉ある、私の法廷の直接主義なのです。

 弁護人は裁判員にも「ここは貴方のマイコート、貴方にとって私の法廷」と強調し、裁判員が法廷の構成員であることを自覚して貰い、裁判官に遠慮することなく、自分の意見を言うことが出来るよう励ますのです。
 この励ましがなければ、裁判員は裁判官に顔色を窺うだけの裁判員裁判になってしまいます。