裁判員裁判12−107
「自白調書の読み方」2014.3.11
                 2011年1月〜  宮道佳男
3、恥をかけ
 もう一つ、恥をかくことを恐れるな、喜べ。裁判員と連帯出来ます。
 幾つかの裁判員裁判を傍聴しました。弁護人は恥をかくことを恐れています。証拠が揃っているのに、被告人は否認している。弁護人の無罪と言う言葉が小さいのです。自信なさそうに聞こえます。
 検察官が起訴したのです。証拠が揃っていることは間違い有りません。検察官が「被告人は罪状明白なるにも拘わらず、敢えて否認して反省の意思なし」と責め立て、裁判員は同意しそうになります。その時、弁護人が消極的になっていたら、お終いです。
 被告人が否認しているのは、必ず訳があるのです。声を振るって、その訳を代弁しなければなりません。
 弁護人は、疑わしきは罰せず、証拠不足の無罪に逃げ込もうとしてはいけません。陪審員は弁護人の逃げ込もうとする態度を見抜きます。大衆はこんな所のカンが鋭いのです。
 被害者証人を人格批判するな、という弁護術があります。
 電車痴漢事件で「貴方は無実の人を誣告したのではない。犯人を見間違えているのでしょう」と尋問するのは正しい。無用な反発を避け得ます。
 しかし、強姦か和姦かという裁判では「その時被告人の力は強くなかったでしょう」と尋問するだけではなく「その時貴方は腰を振ったか、歓喜の声をあげたか」と尋問すべきなのです。恥ずかしそうに尋問してはいけません。直立不動の姿勢で直視するのです。被告人が聞いて貰いたいと願っている尋問なのです。被告人はこの尋問を聴きたいが為に、否認し、腰縄付きで法廷に来ているのです。
 紳士の弁護人はこのような下品な尋問をしません。裁判員はこの態度を逃げ腰と見ます。弁護人さえ被告人の言い分を信用していないと見ます。
 被告人は鉄鎖以外に奪われるものはなし。
 弁護人は恥を捨て、被告人を代弁しなさい。
 その中で、裁判員は被告人と弁護人との連帯を見て、もしかしたら、と発想してくるのを待つのです。無罪の確信を抱いて弁護する弁護人、法廷内での被告人と弁護人の連帯と友情の姿、裁判官は見ようとはしません。見てはいけない、判断の証拠にしてはいけないことを心得としています。
 しかし、裁判員はみるでしょう。