裁判員裁判12−24
「自白調書の読み方」2011. 8. 23
                 2011年1月〜  宮道佳男
1、秘密の暴露

 自白調書の中に秘密の暴露があれば、自白調書は信用できます。
 例えば、「兇器を川に捨てた」という自白があり、川浚いしたら、本当に兇器が出てきたときです。
 もしも、裁判中に山から出てきたら、自白と事実が矛盾することとなり、自白調書の任意性・信用性が否定されます。川と山とで嘘があれば、殺人自白自体が嘘と見るべきなのです。
 秘密と言う以上、取調官が知らなかった事実を被告人が自白することです。被告人が取調官から教えられたり、過去に現場に行ったときの記憶、新聞報道による知識、取調官との会話の中から常識的に想像できる事実は秘密に当たりません。疑似体験供述とか疑似秘密とか言います。
 仁保事件差し戻し高裁判決 被告人が自白する帰郷後犯行前に立ち寄った場所は実在するが、被告人が生まれ育った知識でもって供述しうる内容であり、他に被告人を目撃したと言う者もいない。
 豊橋母子殺人事件 地裁無罪判決 被告人は自発的に相当詳細な供述をしていたことが認められるが、被告人は被害者の店で稼働していた者として、何回も現場検証に立ち会わされ、新聞記事を読み、相当の予備知識を得ていたことが認められることに鑑み、相当詳細な供述をなすことは十分可能。被告人の犯行を想像して自白したとの弁解は不自然でない。
 
 1532年ドイツカロリナ法典 拷問の悪弊防止の為に、確たる懲憑ある時に限り拷問の許容、拷問と自白の過程の整序化、自白内容の事後検証が要求された。事後検証による自白の真実性の確認これが秘密の暴露です。拷問により自白が得られると、次に拷問無しで訊問をして、その異同を確認する。裁判官は人をその地に派遣し、自白が真実や否や尋ねるべし。
 真犯人でなければ事実を語れません。事実を語れない人は真犯人ではありません。
東京高裁昭和58年6月22日判例時報1085-48
 合い鍵を入れて回しただけでは金庫は開かず、一旦左扉の下部を足で強く押すと開くという癖を持っている金庫を開ける場合、自白がこの癖を述べていないとき、秘密の暴露がないと言います。 

 真実の秘密は強い。固定して変遷することはない。被告人が秘密の暴露の自白をしていても、それが変遷するとき、秘密性は崩れる。