裁判員裁判12−26
「自白調書の読み方」2011. 9. 14
                 2011年1月〜  宮道佳男
1950年財田川事件 被告人の自白調書では、二度刺しを自白していた。これは一度刺して抜ききらないうちに再度刺すことで、解剖すると、確かに二度刺しであった。そこで秘密の暴露があったとして、死刑が確定したが、再審では、取調官は解剖の結果、二度刺しを知っており、被告人を誘導した虞があるとして無罪とした。当時の署長が証人となり、解剖結果の二度刺しは、予断を与えたくないので、わざと取調官に知らせていなかったと証言したけれども。
 再審決定「取調官ひとりが二度刺しを知らなかったとは、甚だ訝しいと言わざるを得ず」 
 そうでしょう。取調官・捜査官の捜査会議とは、証拠と情報を共有する為にあるのです。証拠を知らずして取調はできないのです。
 署長の証言が真実ならば、素晴らしい取調手法と賞賛しなければなりませんが、取調官を悪人視して自己規制する捜査方針は日本では取られたことはありません。捜査会議では、捜査員取調官の全員が打合せをしています。しかし、この方針は有る意味では正しいのです。統括捜査官と取調官とを分離して、統括捜査官が取調官をチェックする手法は今後採られるべきです。ただし、統括捜査官は、いつ如何なる情報を取調官に伝え、又は何を伝えなかったかを記録しておく義務が前提です。兇器の形状や、解剖結果を取調官に教えずに、取調させ、統括捜査官が取調官から報告を聞くことは面白い試みです。しかし、証拠を知らされない取調官の欲求不満は募ります。統括捜査官に隠れて知りたがります。そして、知ったら、容疑者に教えてしまいます。落ちましたと報告を受けた統括捜査官は誤るでしょう。
 ボケと突っ込みの二役で攻める取調の手法、怒鳴る役とマアマアと取りなす役、漫才のやり方です。もう一人、加えたらどうですか。
「やってもないのにやったとウソの自白なんかするな。お前は刑務所に入ってタダ飯食いたいのだろう。この税金泥棒め」
 やっぱり、弁護人の取調立会権を認めることです。
 取調官「おい、こら、やったか」
 弁護人「異議あり、誘導で、かつ強要です」
 アメリカではミランダルールと言われています。

 1950年二俣事件 一家4人殺し
 自白調書「掛け時計の針を2時間進めて偽装工作したとき、文字盤の覆いのガラス板はなかった」が秘密の暴露に当たるとして一審二審死刑判決、最高裁「警察は検証でガラス板がないことを知っており、秘密の暴露に当たらないと無罪」

 1969年大森勧銀事件
 一審 被告人が犯行時に所持していたという兇器の入手と処分に関する被告人の自白は秘密の暴露を含み、かつ客観的証拠と符合するとして、自白の信用性を認めた。
 最高裁 肝心の兇器が発見されていないので、自白の信用性を裏付けるものとならない。
 殺人事件では、兇器を捨てた場所そしてその発見は秘密の暴露に当たります。