裁判員裁判12−28
「自白調書の読み方」2011. 9. 28
                 2011年1月〜  宮道佳男
2、自白の矛盾

 自白の矛盾には、アリバイ証明のような、積極的事実との矛盾、刺したと自白しているのに、刃物から指紋が出ない、という消極的事実との矛盾の2タイプがあります。
 無実の被告人は現場を知らない。死体を見ていない。取調官から教えられたことを元に語る真似をするだけです。
 取調官の現場を見ての想像は当たっていないことがあります。証拠と矛盾する自白は信用性がない。
 有罪決めつけ派の裁判官は、証拠と矛盾する自白は、その部分のみ、被告人がわざと嘘を言った、その目的は、捜査の混乱にあるとか、被告人の思い違いとか、一つ二つ間違いがあるのか本当の証拠とか、言って、自白全体の信用性を認め、取調官を救済します。
 狭山事件 最高裁決定 昭和52年8月9日 判例時報864-22
「供述者は、自己の体験した事実について、供述時に記憶を失ったり、又は間違った記憶に基づいて供述する場合があるほか、意識的にせよ無意識的にせよ自己に有利に事実を潤色して供述し、あるいは、自己に都合の悪いことについては供述を回避し、又はあいまいな供述をすることがある。供述内容と客観的証拠との間にくいちがいがあるからといって、直ちに供述全体が真実性を失うものと評価することは正しくない」

 八海事件、単独犯行か、共同犯行かの事件 主犯が消費した10円札15枚、被害者宅残存10円札7枚、共犯者宅から押収の10円札6枚、いずれも同一番号紙幣であることが、有罪2審判決で自白の補強資料とされた。
 しかし、第2次控訴審で、主犯消費10円札と被害者宅残存10円札とは一致するが、共犯者宅押収紙幣とは画版と断裁を異にし、別機会発行と判明した。
 
 1971年日石土田邸爆破事件 
 女性2人を含む11人が起訴、全員無罪
 警察は、内7人が爆弾運送役と想像して取調、7人にアリバイのある時間帯があり、苦慮した結果、各人のアリバイ時間帯を巧みに外して、リレー式運送の構図を描いた。9人自白、女2人否認
 公判で、内1人が正にその時運転免許試験場に行っていた事が判明し、構図は崩壊し、全員無罪。