裁判員裁判12−3
「自白調書の読み方」2011. 2. 2
                 2011年1月〜  宮道佳男
4、公判でも維持されるウソ自白
 
 1970年豊橋母子3人殺人放火事件 文房具店の主人の不在の夜、妻が絞殺されて放火され、子供二人が焼死した。通いの店員21歳の顔にひっかき傷があったという不確かな話から追求すると自白、取調官に囲まれて出廷した第1回公判でも自白、拘置所へ移管後の2回目から否認。遺体の精液の血液型から無罪判決
 警察署留置中は、取調官の圧力から脱しきれない。拘置所に移管され、心ある人の面会から本心を取り戻し否認に転じた。人は応援団がいないと、生きていけないのです。代用監獄廃止論の根拠となる事件です。この裁判は、無罪派刑事の証人出廷という異例の展開の結果、無罪となった。郷成文弁護人がご苦労された。
 第1回公判まで、国選弁護人は2回しか面会に来なかった。
 自白すると、取調は穏やかになり、取調官がズボンを差し入れたり、ラーメンを作ってくれた。第1回公判に行く朝、取調官は「今日公判が無事にすんだら、君の好きなものを食べさせてあげよう。公判は何も心配することはない。検事が起訴状を読み、裁判長が間違いないかと聞くから、間違い有りません、と答えれば終わりだ。私たちも後ろで見ているから大丈夫、早く済ませて一緒にうまいものでも食べよう」
 被告人は傍聴席の取調官の視線に監視されているのを感じながら、「間違いありません」と答えたのです。

 無罪派天日正次警部補 定年を待って出廷
 捜査本部内で被告人無罪説を主張して、所払いの冷遇
自白と死体が残す犯行態様が矛盾する。
 証を得てのち、人を求めよ。
  1954年名古屋駅西商店女主人絞殺事件 犯人が自白したが、天日には得心がいかない、動機が納得し難い、自白の死体の位置が現場に合わない。誘導にならないように配慮して聞くが、どうしても現場とずれる。
 天日「どうしてやってもおらんことをべらべらしゃべるのか」
 容疑者「えらいお世話になった人です。一向に犯人が挙がらん。私みたいな者、 生きていて何の甲斐もない。世話になった人を成仏させてあげようと思ったのです」
 後日真犯人が検挙された。
 
 取調官は、「やったろう」と試し尋問ばかりするのを一度止めて、「やっとらんのにウソ言うな」と一喝してみよ。