裁判員裁判12−35
「自白調書の読み方」2012.1.12
                 2011年1月〜  宮道佳男
松川事件では、赤間が「汽車転覆」の話をしたのが、事件の前か後かが、問題となった。前ならば、予告であり、後ならば世間話である。60年の公判で検察申請証人は「事件前に汽車転覆と聞いた」と証言した。この証人は法廷の外で記者に「赤間から脱線作業を手伝わないか。酒代を出すから」と出鱈目の尾ヒレ話を話した。有罪派は話を面白くする為にこんなこともする。
 2011年再審無罪となった、布川事件 桜井昌司と杉山卓男は強盗殺人事件の嫌疑を受けた。二人の姿を現場近辺で目撃したという証言と二人の自白が証拠とされて無期懲役となった。目撃者の証言が登場した原因として、新聞報道が上げられる。二人が逮捕されたとき、真犯人逮捕の大々的報道がなされ、顔写真付きの新聞記事は地元民に強烈な暗示を与えてしまった。二人は元々素行が良くない。無責任な噂話、警察の断定、報道の暗示と誘導が目撃者の証言に影響を与えてしまった。
 免田事件では、再審開始となり世間の話題となってから、これまで捜査線に上がっていない人が「事件当夜自宅にいるびしょ濡れの免田を目撃した」との名乗りをあげて検察官側の証人となった。この人の目撃した日が事件当夜なのか、30年もたって記憶が正確なのか、大いに疑わしく、結局、信用されず、再審無罪は決定された。何故このような人が登場するのか。あいつを英雄にしたくない。自分が英雄になりたい、という心境があり得るのではないか。多分この人は免田を別の日に目撃したのであろう。被疑者や証人の事件を巡る、事件に派生して発生する様々な人間模様に注意しなければならない。再審開始決定の後、刑務所にいる免田宛てに様々な手紙が届いた。激励の手紙が多いなか、誹謗する手紙も多かった。刑務所当局は死刑囚の免田の心情を刺激する手紙を免田に渡さなかった。免田に無罪判決が下りた後、当局は渡さなかった手紙類を免田に渡したが、段ボール数箱あった。
 中身は、人殺し、再審するな、男らしく死ね、嘘を言って出てきても俺が殺してやる、被害者の苦しみを思ったことがあるか、というものであった。
免田榮獄中ノート
 この世には、仏と鬼が棲んでいる。