裁判員裁判12−38
「自白調書の読み方」2012.2.22
                 2011年1月〜  宮道佳男
1970年大森勧銀強盗殺人事件
 当初の自白は軍手着用 捜査員は途中から軍手では指紋は残らないが、軍手の模様が出ることに気付き、被告人に軍手からビニール手袋へ自白変更させた。

1951年青梅事件 チンピラ6人と共産党員4人による列車妨害事件 
 高裁有罪判決「自白には変転矛盾がある方が、任意性がある。小出しに自白するから変転は当然」 被告人10人の内、4人は法廷でも自白し保釈、内2人は否認組法廷に証人出廷して否認証言、すると偽証罪で逮捕してしまった。
 この事件では、検察官が第1次起訴前の自白調書136通を証拠提出しなかったという特異なことがありました。弁護人は強く要求していましたが、差戻審の最終段階で裁判所の強い勧告により、検察官が提出しました。
 差戻高裁無罪判決「共犯者に相互に矛盾する供述の変転がある。各被告人に一様に現れているのも奇異である。この変更の理由は、単に、今までは嘘を言っていて申し訳ない、今度こそ正直に述べますと言いながら、次にいつしか又、それは嘘であった、ということになるだけで、供述者から首肯するに足る説明は全くなされていない。このようにして、起訴前自白によれば、犯行は2件、共犯者も5〜6人くらいから、起訴後10日〜1月で3件増え、共犯者は、多いのは10人にふくれあがり、動機も首謀者も一変し、不良の悪戯から、共産党員の計画的犯行らしきものにまで変貌するのである」
 公判自白組2人、1審で猶予付き判決、控訴して否認
 2審有罪 上告差し戻し 1968年高裁全員無罪 

 一日の自白調書の中での変遷
 自白調書に訂正部分があると、何字削何字加入と欄外に記載して訂正する。
 3mが5mに訂正されていれば、欄外に1字削1字加入と書く。
 その日の取調の中で訂正が行われたわけで、その日の変遷である。何故最初取調官は3mで納得したが、取調の途中で5mに訂正したくなったか、想像するべきである。取調官は取調を中断して、何かをしに行ったことはないか。
 最近は、ワープロであるから、これがなくなったのは残念です。

八海事件 2度目の控訴審判決 無罪
「吉岡が殺害態様の自白を変転されていることから、吉岡自ら体験した印象の最も深い一連の事実を供述するにあたってかくも供述内容が変転することは頗る不可解で、このこと自体からしても何れの供述も軽々に信用できない」

1979年貝塚市ビニールハウス殺人事件 一審有罪 二審無罪 
 被告人は兇器を自宅の道具箱に入れたと自白、しかし、兇器は自宅の机の引き出しから発見、しかも長さ・形状が自白と違う。
 取調官は、自白を変更させ、記憶違いであり、この兇器が本物に間違いがないとの自白調書を取っている。