裁判員裁判12−42
「自白調書の読み方」2012.4.18
                 2011年1月〜  宮道佳男

松川事件再上告審 齋藤朔郎裁判官補足意見
 公判廷の自白であるのならば裁判所が直接その自白を聞くのであるから、もし自白の内容に矛盾を含んでいるときは、真実性に誤りがないかをいろいろの角度で吟味することができる。しかし、捜査中だけの自白の内容に矛盾をふくんでいるときには、裁判所としてその真実性を吟味するのに十分な方法を持たない。かような場合、その自白以外に極めて有力にして的確な別の証拠がないかぎりは、その矛盾を解消できないままで裁判所が真実性を認めることは到底できないところである。捜査官としては、かかる矛盾についていわゆる打診的発問などを行い、その矛盾の解明に意をそそいでおいて、そのことを調書上明らかにしておいてもらわないと、裁判官としては心証のとりようがない。供述調書の内容に矛盾を含んでいるときでも、ただ供述者のいうがままに録取しておけばよいのだという態度でなく、真実の発見のため、その矛盾点の解明に役立つような取調をしておいて貰いたい。もしそれにかかる捜査の欠陥を、裁判所の専権として有する自由心証の自由をもって補充し、真実性を容易に承認するが如きことがあっては、裁判の中立性を自ら放棄するものであろう。

三鷹事件の竹内景助被告人は、逮捕後否認→単独犯行→共同犯行→公判で単独犯行→否認→単独犯行→1審無期懲役→2審単独犯行→2審死刑→最高裁否認→再審請求否認、と変遷を繰り返している。

 自白の変遷とは、周辺捜査の結果変動と連動して起こる。その関連性を突き止めると、変遷の訳が分かる。

 道元禅師 正法眼藏 重大な罪を犯したとき、人は悟るものである。
 真犯人の自白は変遷しない。
 ウソ自白した者は機会を見て覆そうとする。