裁判員裁判12−43
「自白調書の読み方」2012.5.8
                 2011年1月〜  宮道佳男

「思い出しました」は誘導と手打ち式なのです。
 自白調書には、よく「思い出しました」が登場します。
 弥富父親強盗殺人事件でも、最後にパチンコに行った日、犯行時刻についてありました。最後のパチンコに負けて自殺妄想に取り付かれ事件を引き起こしたので、この日は重要なのですが、犯行後12日目に逮捕されたので、日付の記憶が曖昧で、数日前と自白していました。警察が調べると、犯行前日と判明し「調べた結果だが」と持ちかけると、被告人も同意しました。
 犯行時刻は、当初、午後3時頃と自白していたが、警察が父親のパチンコ店退出時刻を防犯ビデオで調べて、3時半頃と推定し、被告人に持ちかけ、被告人も同意しました。
「思い出しました」と書いてありますが、実際には、被告人は思い出していません。犯行時、時計を見ていませんから、思い出す筈もないのです。「思い出しました」ではなく「おっしゃるとおりでいいです」の意味しか無いのです。
自白調書に「思い出しました」が出てきたら、警察の推定を疑い、真否を確認する必要があります。