裁判員裁判12−44
「自白調書の読み方」2012.5.23
                 2011年1月〜  宮道佳男

変遷の言い訳 
 
自白の変遷があったとき、取調官は当然気が付きます。そこで自白調書の中に、変遷の言い訳を被告人に語らせます。「思い出しました」というのもその一つですが、もっと細かく言い訳させることもあります。
 1986年宇都宮地裁強姦未遂事件 日弁連無罪事例集第一集登載
 被告人が被害者の自転車を追い越した地点について変遷が認められる。被告人はその変遷の理由として「適当なことを話しておけばいいと思った。適当なことを言っても分からないだろうと思ったからウソの話をしていたが、現場まで案内して説明している内、ウソの話をしてもいつか判明するし、気持ちも落ち着かないから本当のことを話した」と言うが、被告人が、既に逮捕前から犯行を供述していたという事実を前提にすると、単なる地点について殊更ウソの供述をしなければならない理由はなく、また現場で本当のことを話す気になったというのであれば、駅からの往路で話すのがむしろ自然であって、被告人の供述の変遷に関する説明は不自然である。

 取調官が被告人に言わせた変遷の言い訳が合理的かを検討し、被告人がこんな言い訳を言うはずがない、取調官が言わせたのだと主張すべきです。

 目撃供述の変遷については、八海事件が参考となるが、1984年自民党本部放火事件もとても参考となる。
 
冤罪・自民党本部放火炎上事件 松永憲生
 事件後に交番前を通過したトラツクの助手席にいた被告人を目撃したという交番警察官の証言、電磁弁を販売したという売り子の証言が登場したが、その変遷の不合理生を巧みに衝いている。この裁判では、他に、筆跡鑑定、視認の明暗度、目撃供述の信用性鑑定、頭髪の成長鑑定、をしており、中核派vs日本国という戦争法廷のようなもので、あらゆる法的手段が駆使されており勉強になる。