裁判員裁判12−51
「自白調書の読み方」2012.9.5
                 2011年1月〜  宮道佳男

  防衛医科大学教授電車痴漢事件 最高裁判決2009年4月14日
 一審二審実刑1年10月 最高裁無罪(3対2)
 那須多数の補足意見
「冤罪で国民を処罰するのは国家による人権侵害の最たるものであり、詳細かつ具体的、迫真的などの一般的抽象的理由で、女性証言の信用性を肯定し、有罪根拠とするには慎重な検討が必要とする。電車内痴漢犯行は@普通の能力を有する者がその気になれば、その内容の如何を問わず、法廷で具体的かつ詳細な体裁を具えた供述をすることはさほど困難ではない。A女性は検察官と入念な打合せを経たうえで尋問に臨んでいるから、公判供述が外見上、詳細かつ具体的、迫真的なものになるのは自然の成り行きである。従って、証言が迫真的であっても有罪に踏み切るにはなお厳しい点検が欠かせない。女性の供述は、一般的・抽象的性質は備えていても、特別に信用性を強める内容は含んでおらず、補強証拠もなく事実誤認の危険が潜む典型的被害者供述である。
 合議体による裁判の評議に於いては、このように、意見が二つ又はそれ以上に分かれて調整の付かない事態も生じうるところであって、その相違は各裁判官の歩んできた人生体験の中で培ってきたものの見方、考え方、価値観に由来する部分が多いのであるから、これを解消することも容易ではない。そこで、問題はこの相違をどう結論に結びつけるかのであるが、私は個人の裁判官における有罪の心証形成の場合と同様に、『合理的疑いを超える証明』の基準及び『疑わしきは被告人の利益に』の十分配慮する必要があり、少なくとも本件のような合議体に於ける複数の裁判官が被害者の供述の信用性に疑いを持ち、しかもその疑いが単なる直感や感想を超えて論理的に筋の通った明確な言葉によって表示されている場合には、有罪に必要な『合理的疑いを超える証明』はなおなされていないものとして処理されることが望ましい。これは『疑わしきは被告人の利益に』の原則にも適合する」
近藤多数の補足意見
「被害者は具体的に被害を供述し、被告人は一貫して否認している。その他目撃者などの有力な証拠が存在しない。即ち、水掛け論になつているのであり、それぞれの供述内容をその他の証拠関係に照らして十分検討してみてもそれぞれに疑いが残り、結局真偽不明であると考える外ないのであれば、公訴事実は証明されていないこととなる。
 被害者の供述内容が虚偽である、あるいは勘違いや記憶違いによるものであるとしても、これが真実に反すると断定することは著しく困難なのであるから、被害者の供述内容が、『詳細かつ具体的』『迫真的』『不自然・不合理な点がない』といった表面的な理由だけで、その信用性をたやすく肯定することには大きな危険が伴う。また被害者の供述するところはたやすくこれを信用し、被告人の供述するところは頭から疑ってかかるということがないよう、厳に自戒する必要がある・・・・被害者の供述の信用性には合理的疑いをいれる余地があると言うべきである。もちろん、これらの諸点によっても、被害者の供述が真実に反するもので被告人は犯行を行っていないと断定できるわけではなく、ことの真偽は不明だということである。」

 電車痴漢事件についての感想
 今、高速道路で無料化社会実験が行われている。社会実験とは面白い試みである。ならば、電車痴漢社会実験をしたらどうであろうか。
 国家公安委員長が、内密で役者の卵のような男女に依頼する。女は電車で男の手を捻り挙げて痴漢被害を申告して実験開始とする。その後の捜査を見守り、起訴直前で実験であることを宣言し、捜査の過程を検証する。起訴しかけた−欺された検察官に注意指導する。
電車内で定期的にアナウンスする。「痴漢は犯罪です。被害を受けた女性は、指に口紅を塗りつけて体を触っている男性の手を握って、痴漢よーと大声で叫んでください。現行犯が必要です。触られている瞬間に握ってください。周りの皆さんは逮捕に協力され、ホームの駅員か警察官に引き渡してください」