裁判員裁判12−67
「自白調書の読み方」2013.4.23
                 2011年1月〜  宮道佳男
取調官の無能
 自白調書に争いがあり、弁護人が違法取調を主張し、出廷した取調官は異口同音に被告人が改心し任意に供述した通りを録取したと証言する。自白調書相互間に矛盾、自白調書自体に不合理性があっても証言する。マニュアル通りです。
 免田事件再審無罪 熊本地裁八代支部昭和58年7月15日
「取調官といえども、すべての事実を詳細に把握しているわけのものでもないし、そのようなことを要求するのもいささか酷であろうが、しかし出来るだけ客観的事実を認識したうえで取調に当たるべきことは当然であろう。
 事実に合わない不合理な供述がなされた場合、一応言うままにメモを取るというようなことがあっても供述調書にする場合には当然矛盾点を指摘するなりした内容になっているべきであり、それを欠いた調書では果たして信用できるものか否か取調官自体心証がとれないのでないか。それがない調書というのは、やはり供述者が苦し紛れにでたらめを言ったとしても、取調官においてそれを糺すだけ能力なり知識なり準備がなかったか、さらには自分の誤った事実認識に基づく安易な誘導か強制があったとさえみられても致し方がないのではないかということである。
 供述は客観的証拠や客観的事実により裏付けられることによって信用性が与えられる。供述自体がいくらもっともらしく見えても客観的証拠や事実に合わなければ、これを信用することができないのであって、やはり自白の信用性の一つのメルクマールとして客観的事実との符合の問題があるというべきである。客観的事実と合わない供述や不自然、不合理な供述はそれが被告人が任意に述べた証拠にほかならないから、自供内容としても信用できると考えるのはやはり通常でなく、でたらめを述べたから、そのような供述になったと考えるのが自然であろう」 

 取調官を下品な者と指摘していたが、そうではない例もあるから指摘する。
前坂俊之 誤った死刑

 1938年甲府地裁検事局岸本次席検事講演 捜査官の心構え3原則
 詐術や謀略によって取調するな。
 引っかけて調べてはいけない。甲が自白していないのに、乙に向かって甲はやっているぞと言ったりしてはいけない。性格の弱い者は警察に呼ばれただけで心の平静を失う。このような人の心の平静をかき乱して自白させてもその自白は決して真実ではありません。
 押しつけてはいけない。
 誘導尋問はいけない。捜査官がある想定見込みを立ててこれに合致するように関係者を導いていく調べ方は困ります。
 証拠品のすり替えはダメ
 捜査官は誠実で良心的でなければならない。
 立派な話です。私の自白調書の読み方で指摘していることを網羅しています。検事がこのようにちゃんと警察官に講演しているのに、戦前戦後から今日に至るまで冤罪事件が絶えないのは何故か。