裁判員裁判12−69
「自白調書の読み方」2013.5.8
                 2011年1月〜  宮道佳男
弁護人のアリバイ立証は、はかないものである、ことを忘れるな。
 日石・土田邸爆破事件のように、被告人がその日運転免許試験場に行っていたというアリバイが、免許試験場の公的証明として得られるような奇跡は稀にしかおきない。
 検察官と裁判官は「別の日と誤解しているのでしょう」と冷たく切り捨てる。
 青梅事件 1951年10月1日から3日、青梅市はお祭りでした。被告人の一人が1日と3日にお祭りに参加していたことは、目撃者証言で裏付けされた。
 しかし、判決は、1日のアリバイは2日かも知れない、3日のアリバイは2日だったかも知れない、と切り捨てたのです。
 弁護人のご苦労の産物のアリバイ立証も裁判官の屁理屈に合うと、採用されないのです。それどころか、アリバイ立証をアリバイ工作と見なしてくるのです。 青梅事件では、自白保釈組の被告人が出廷して無実だと証言したら、偽証罪で逮捕されるということまでありました。
 弁護人よ、アリバイ立証の時は、注意せよ。アリバイ証人が逮捕される危険性がある。甲山事件でも、アリバイ証人の園長が偽証罪で逮捕されている。無罪にはなったが。

 弁護人がアリバイを証明できないかと苦心するように、捜査官はアリバイを否定し、かつ被告人のアリバイ主張が虚偽工作であると証明する為に苦心する。
日石・土田邸爆破事件 捜査官の想定は、爆弾を日石ビルまで搬送するのに6人が3区分して担当したとした。6人全員で一台の車に乗って爆弾を搬送してくれれば楽なのであるが、6人各人には、その時工場にいたとか、新幹線に乗っていたとか、虫食いのようにアリバイがある。捜査官は6人の行動表を作成してにらみっこし、6人各人の証明されないアリバイ時間帯を継ぎ合わせて、3分割リレー搬送を夢想した。そして、この線で自白を強要し、最後に、3分割リレー方式はアリバイ工作が目的であると確信し、捜査は被疑者らのアリバイ工作を潰したと誇示した。
 しかし、第2区走者がその時間に運転免許試験場にいたことが明らかとなり、被告人のアリバイが成立し、捜査官が誇示したアリバイ工作潰しは破綻した。