裁判員裁判12−71
「自白調書の読み方」2013.5.22
                 2011年1月〜  宮道佳男
18、法律論の自白は取調官の教育 
 事実論ではなく、法律論で違法認識があったか否かが、論争となるときがあります。犯行時に違法認識がなかった被告人に対して、取調官が法律を教育して「違法だから、違法認識を認めよ。法の不知は罰するとの格言もある」と迫ります。すると、被告人は「畏れ入りました」と犯行時の違法認識を認めてしまうのです。
 1990年鉱害被害補償二重詐欺事件 日弁連「誤判原因に迫る」登載
 鉱害補償金と同和対策補償金の二重受給が詐欺に問われた事件
 判決 捜査段階で被告人が詐欺の故意を認めた自白については、同和対策事業から補償金を受けた場合、鉱害補償金を受けられないことを知らなかったとして不自然ではない環境にあって、何故これを知り得たかの供述がないことから、これは後になって取調官から二重請求が違法であると知らされ、反論もできないまま、自白したものと思われ、信用性に欠ける。

 1992年無銭飲食詐欺事件 日弁連「誤判原因に迫る」登載
 旅館での無銭飲食宿泊の事例であるが、詐欺を認める自白調書が出来ていました。被告人は法廷で「身分を明らかにしているし、バックを預けて外出しているから詐欺の故意はない」と主張しました。
 判決 詐欺事件特有の虚偽自白として、法律知識の無い被告人の場合、債務不履行が発生していることが直ちに詐欺罪になるとの捜査官の誘導に屈しやすく自白調書が作られやすい。