裁判員裁判12−72
「自白調書の読み方」2013.5.28
                 2011年1月〜  宮道佳男
19、擬態語に欺されるな
 擬態語が出てくると、具体的、迫真味があった信用できる、と思い込む素人がいます。取調官の中には、これを目的として擬態語を愛用する人がいます。概して文芸能力に劣る人です。漫画ばかり読んできた世代の取調官はそうなります。
平成15年1月20日釧路地裁帯広支部判決
町長が4/3自宅で4/14町長室で各20万円受け取ったのが収賄に問われた事件
判決は4/3を無罪、4/14を有罪としました。
 町長の自白調書では、20万円受け取りの際、ぐっと封筒を突き出され、拒絶する間もないという感じで、すっと受け取ってしまったのです。私は驚いて、えっと思っている内に受け取ってしまいました、とあり、検察官はこれを具体的かつ詳細で、迫真性に富んでいるから信用性が高いと主張する。
 しかしながら、この場面は、要するに贈賄者が被告人方からの帰り際に玄関で被告人の方に振り向いて現金の入った封筒を差し出したというに過ぎない単純なものであり、いかに、ぐっと、すっと、えっ、などと擬態語を駆使して修辞しても、それを実体験したものでなければ語れないような独自の内容が付け加わるわけでないから、迫真性に富んでいるとは言い難い。
 この裁判官は欺されていないのです。
 被告人の口から出た言葉を自白調書に書かなければいけないのです。実体験をしていない無実の者は、語れないのです。ですから、イライラする取調官は、誘導する、自分の口癖の擬態語を教えるのです。取調官への尋問で聞くべきです。「ぐっと、すっと、えっ、は最初誰の口から出た言葉なのか」と
 取調官への尋問をしているうちに、取調官が「えっ、ぐっと」などを連発し始めたら、「何だ、君の口癖か」と締めくくるのです。
 DVDの全面化が実現すると楽しいのです。先に取調官から「ぐっと、すっと、えっ」 と語る場面にお目に掛かることができます。