裁判員裁判12−88
「自白調書の読み方」2013.10.26
                 2011年1月〜  宮道佳男
 共犯事件のとき、取調官は絶対に被告人に共犯者と面会させない。留置場も別の警察署にする。口裏合わせを防止するためです。ところが、取調官は共犯者がこのように自白したとか教えてしまう。被告人はそれをなぞって自白する。口裏合わせのようなものです。被告人が口裏合わせをしているのに、取調官は落としたと喜ぶ。いや、分かっているのである。我が手中に落としたと。
 そして、裁判官は被告人と共犯者の自白調書を読み比べて、犯行の手口、被害金品、逃亡経路が一致していることに安心して有罪判決を下します。でも、賢い裁判官ですと、その一致の不自然さに気が付きます。
 共犯者の自白調書によると、共犯者は西に逃げ、被告人は東へ、どこそこを経由して逃げたと自白している。共犯者は逃げる被告人の姿を見ていないのに、どうしてそう言えるのだ、取調官が仲介しているのではないか。

 日野町強盗殺人事件1984年 老婆殺し
 有罪一審判決「被告人の自白は客観的事実と合致しない点があり、これらの点については被告人が故意に虚偽の供述をしているとしか思えない。・・・犯人としてはたとえ自白したとしても、なるべく責任を免れ、もしくは軽減させたいと思うのが通常であるから、供述が変遷するのはむしろ自然ともいえるし、場合によっては、真実と虚偽を混ぜ合わせて供述する場合もある」
 被疑者が虚偽の自白をすることはよくあることですが、それは過酷な取調に耐えかねてのことであり、故意に、捜査を混乱させるため、将来の裁判戦術のために、することはあり得ません。そんな余裕も知恵も持っていません。