裁判員裁判12−9
「自白調書の読み方」2011. 3. 14
                 2011年1月〜  宮道佳男

F 最初のウソをお詫びするハイ
 1994年2月18日和歌山地裁 無罪判決
 暴走族が喧嘩相手の車をボコボコにした事件であるが、現場にはいたものの、犯行に参加していない者が警察に呼ばれ「現場に行っていない」とウソを話したが、警察官からそのウソを見破られ、「何故ウソを言った」との厳しい追及に耐えかね、全面降伏しウソを言ったことを謝罪する趣旨で、「一回だけ車を蹴りました」と自白
 警察に呼ばれた者は、何かしら弱みを抱いているものです。細かいところでウソを付く。ばれると警察官は当然怒り出す。怒りを抑えて貰う為には、お土産がいる。こんな動機でウソ自白が生まれるのです。

G 法を間違えて教える。
 恐喝事件で、取調官が「罰金略式命令になるからおとなしくせよ」と言われて、ウソの自白をしたが、正式起訴されてしまい、被告人は法廷で争った。
 恐喝の法定刑に罰金刑はない。だから検察官は「取調官がそんなことを言うはずがない」と主張したが、裁判所は、あり得る話だとして、自白調書の信用性を否定し無罪にした事例がある。
 あり得る話なのです。法律のプロの筈の刑事も法を知らないことがあるのです。
 名古屋地裁のことですが、ある弁護人が、前刑終了後5年以内の再犯であり、執行猶予を付けられないのに、誤解し「執行猶予付きの寛大なる判決を求める」と弁論したら、裁判官が真に受けて執行猶予付き判決を下し、検察官が血相を変えて裁判官席に詰め寄り、裁判官は記録を読み「もうあかん。判決を言い渡してしまった後であるから、控訴してくれ」と言った話を聞いています。