裁判員裁判12−92
「自白調書の読み方」2013.11.20
                 2011年1月〜  宮道佳男
(なぜ無実の人が自白するのか 2008年 SAドリズィン・RAレオ  日本評論社)によると、 自白事件で、DNA鑑定の登場により再審無罪となったアメリカの例125件を調査している。陪審員・裁判官・検察官・弁護人らが、自白した被告人を囲んで、ウソか本当か、心理学者を呼んで大議論し、最後は、「自白すれば極刑が予想される事件でウソの自白をすることは考えられない」と思い込んでいる陪審員の有罪評決が出ていましたが、DNA鑑定がひっくり返したのです。
 アメリカで流行の心理学的取調は、被疑者の注目を特定の問題に限定させ、現在置かれている立場についての認識を操り、目の前に置かれた選択肢の評価をゆがめるように考え出された。この取調技術は、誤って使われると真犯人だけではなく無実の者にも自白するように決意させるほど効果的である。
 取調官は思いつく材料を被疑者にぶつけ、その表情、態度を観察し、自己が信ずる心理学的手法で、真犯人か否かを判断する。取調官が心理学教科書の愛読者の場合もあるし、単に人相見が趣味・特技とする人もいる。そして、5割の確率で判断を間違える。「やったろう」との質問に対して、被疑者の表情態度を見て、動揺したな、俯いたな、汗を拭いたな、顔色が変わったな、と観察しながら、真犯人と思い込む。「やる筈ないじゃないか」との回答ならば、「やっていない」と明示否認をしていないから、逃げの態度だと有罪を確信する。
 心理学という学問分野が存在することは認めますが、取調という圧倒的地位の差のなかでの、ウソと真実との見極めが可能と言えるほど、心理学は発達していません。よく、取調に心理学を応用するとかの議論を読みますが、疑問です。ポリグラフ検査があります。心理学の捜査への応用なのですが、一般に証拠価値は認められていません。
 現場の取調官は心理学を勉強していません。ただ、人相見をしているだけのことで、善人か悪人かを見分けようとしているのです。しかし、取調室に連れてこられた被疑者の多くは、大抵悪人です。こそ泥も混じっています。見るからに人相風体悪く、悪人面しています。ついでにあの強盗殺人事件もやったじゃないかと想像し勝ちになります。
 取調官は、たとえ捏造された証拠であっても、被疑者に突きつけ、もう逃げられないと確信させる。自白する以外に選択肢がないと繰り返す。次に自白する方が、否認する方より、利益があるし、立場が好転する、裁判官や陪審員からの慈悲が受けられる、謀殺ではなく故殺になると説得する。こんな心理的取調のテクニック話は(自白 真実への尋問テクニック 1990年 Fインボー・Jリード・Jバックリーぎょうせい) に詳しい。これは取調誘発型の虚偽自白と呼んで良い。アメリカの125件の調査が裏付けている。アメリカ式と言ったけれど、日本でも取調官の奥義秘伝として古くから警察に継承されてきている。被疑者の否認を罵倒して追い詰める、黒の物証ばかりをぶつける、アリバイ主張を崩して諦めさせる。共犯者が先に自白したと嘘を言う。家族が謝罪して真人間になってくれと泣いておるぞ、カマをかけてウソを言わせ、今嘘を言ったと締め上げる 死体や現場の状況を教えてしまう 等
 被疑者が知能が劣っていれば、虚偽自白など起こりやすい。
 2000年少女強姦殺人事件、被疑者とされた18歳の低能児、簡単に自白したが、DNA鑑定が彼を救った。
 1986年公園での強姦殺人事件 近所の札付きの不良3人が逮捕され、1人は15時間後自白、「黙っていれば終身刑だが、警察の言う通りにすれば12年」との約束に騙されて全員自白 最初にウソの自白をした被告人は6年服役で釈放、残りは終身刑 15年後DNA鑑定で釈放