裁判員裁判12−94
「自白調書の読み方」2013.12.10
                 2011年1月〜  宮道佳男
大命題「自白すれば極刑が予想される事件でウソの自白をすることは考えられない」は成立するか。
 名張毒葡萄酒事件再審異議事件で名古屋高裁刑事2部は、この大命題を肯定して、再審決定を破棄した。
 弁護団は最高裁へ上告し、ノースウェスタン大学ロースクール誤判救済センターのスティーブン・ドリスィンのこの大命題に対する法廷意見書を提出した。とても貴重なものであるから、引用したい。
 この事件は、1961年3月28日夕刻32人の村の会合で葡萄酒が振る舞われ、5人の女性が毒殺されたもので、死亡者の中に被告人の妻と愛人がいた。
 被告人は取調に呼び出され、3/29は2時間、3/30は6時間、3/31は11時間、4/1は13時間40分、4/2は16時間、4/3は8時間40分であった。
 被告人は4/1妻が葡萄酒に毒を入れるところを目撃したと供述した。4/2夕方7時被告人は自白し、7時間後自白調書が作成された。合計49時間近くの取調である。4/3朝逮捕され、記者会見までさせられた。当時中学生の私もテレビでそれを見た。犯行を認める態度であったが、大罪を犯したという実感のない態度、よそ事のように語る姿に、余計に憤りを覚えたのです。
 一審無罪の後、控訴審死刑、最高裁死刑と進み、再審が名古屋高裁刑事1部で通った後、刑事2部が破棄したのです。