裁判員裁判12−95
「自白調書の読み方」2013.12.10
                 2011年1月〜  宮道佳男
 アメリカで、DNA鑑定により1973年から2007年までに124人の死刑囚が釈放された例、研究例では引用する事件の14〜25%が虚偽自白事案である。
 ドリスィンとレオの自白例125件の研究の結果、44人が雪冤されている。DNA鑑定の結果雪冤された200人の誤判原因を分析し、強姦殺人事件のうち39%、殺人事件のうち25%が虚偽自白に関係していた。
 アメリカでの虚偽自白44人の例、89%が24時間以内に自白し、16%は6時間以内に自白し、平均時間は16.3時間であった。
 刑事2部決定は「49時間の取調は比較的短く被告人にストレスはない」と判断したが、アメリカでは長すぎる。
 たとえ、警察の圧力がなくても、無実の人は虚偽自白をする。なぜ人が自発的に虚偽自白するのかについて、様々な理由が現に存在する。報道されている著名事件では、悪評を得たいという病的欲求、以前の罪に関する罪悪感を償うための意識的ないし無意識的な自己処罰の欲求、主たる精神病に共通する特徴であるが、現実をモニターする力の衰弱により空想と現実を区別することができないこと、真犯人を援助し守りたいという欲求、そして寛大な刑の勧告を受けることへの期待等々である。リンドバーグという有名な大西洋横断パイロットの子供が1932年に誘拐されたとき、200人以上の人が自首している。
 1956年カルフォルニア 恋人を殴打した罪で服役中の18歳少年が恋人がいる故郷の刑務所に移管されれば恋人に面会できると期待して、故郷で発生した強盗殺人事件を自白した。しかし、彼は終身刑を宣告された。虚偽自白を理由に冤罪とされた彼は同じ方法で雪冤しようとした。新聞で知った別の強盗殺人事件も同じように自白したら、この件でももう一つ終身刑を宣告された。17年後仮釈放の後、彼は最初の事件の時に、逮捕されていたことを証明して無罪とされた。
 1943年コネティカット州 ホテル男性支配人が恋人から裏切られたことを理由に刺されて死亡した件、恋人は自白し、有罪答弁をして服役した。2年後、強盗の真犯人が登場した。強盗2人が支配人を刺殺しているとき、恋人は別の男性と性交渉を持っていた。恋人は自白した理由を殺人者の烙印を進んで受けようとするほどに、別の男性とベットにいることを認めたくなかった、と説明した。
 1993年イリノイ州 農家で両親の死体が発見された。警察官が息子を取調しているうちに、息子は自分が意識を失った間に殺害したのかと疑い始めて自白し、死刑を宣告されたが、真犯人が登場した。
 1973年 コネチカット州 息子が帰宅すると母親が死亡していた。警察官が到着し、息子が母親の死に対して十分感情のこもった反応をしていない理由により、息子を被疑者とした。息子は追及され、性的暴行未遂の途中で殺したと自白し、6〜16年懲役刑を宣告された。その後真犯人の指紋証拠の登場により雪冤された。
 名古屋高裁刑事2部は、被告人が当初妻が毒を入れたと供述したことに力点を置いた。しかし、この事実には重要性はない。別の人も自分の妻が毒を入れたと警察に供述しているからである。
 近代的取調における心理作戦は、被疑者を有罪と推定した上で行われ、取調対象者に対する強烈な有罪の確信を持ち、取調対象者から自白を引き出すことこそが成功である、と考えている強い権力を持つ者が主導する、仮説に導かれた社会的相互作用である。
 被疑者を自白に誘導するために、取調官は様々な技術を用いるよう訓練されている。その技術とは、抵抗して否認するコストよりも自白する利益の方が勝ることを被疑者に納得させることを目的としたものである。
 家族が殺害された事件では、とりわけ、虚偽自白をしやすい傾向にある。悲しみに打ちひしがれた家族は警察の取調に対して脆弱である。