裁判員裁判12−97
「自白調書の読み方」2013.12.25
                 2011年1月〜  宮道佳男
 30、利益事実の自白、不利益事実の自白
 被告人が不利益事実を自白すると、裁判官は簡単に信用するが、利益事実については疑う。やりましたは信用し、やってないは信用しない。
 八海事件では、吉岡は5人共犯を自白した。他の4人は警察段階では自白したが、その後一貫して否認している。
 犯行を認めた吉岡自白は不利益事実の承認であるから信用できると速断してはいけない。吉岡は阿藤を主犯とすることで死刑を免れるからである。
 吉岡は、単独犯行→6人犯行→5人犯行→2人犯行→別の2人犯行と次々と自白を変遷させ、その理由を問われると「阿藤が、関係ない一人を混ぜておけ、テレンクレンと話しておけば釈放になり刑事補償金が貰えると指示したからだ」と自白した。捜査の混乱を目的とする工作を予めしていたとは不利益事実の承認なのであるが、吉岡は自分の発案ではなく、阿藤の発案と言い、阿藤を主犯格とし、自分の自白の変遷の原因を阿藤の責任にしてしまった。吉岡を除く被告人らはこんな指示があったとは自白していないのに、裁判官は吉岡を信用してしまった。
 裁判官はアリバイ工作がなされたとか、証拠隠滅工作がなされたと判断すると、有罪判断へ一気に走る癖がある。
 何が利益事実で何が不利益事実なのか、慎重に検討すべきである。