時事評論 3
 年金廃止・掛金払戻 」20070818
  平成19年7月の参議院選挙は、年金が争点となり、自民党は大敗した。
 年金受給権者が年金掛金納付者より多くなり、選挙では年金廃止とか減額を言う政党は大敗することになった。年金のあり方は国民と国会が議論を重ねてより良い制度設計をすれば良いのであるが、国民の中で年金受給者の数が多くなり、選挙になると、既得権者の反対投票により年金制度の改革、年金の廃止、減額が出来なくなってきている。
 国民年金の掛金未納付者は三分の一である。20〜60歳代の国民年金掛金納付者の間には年金制度に対する不審が募り、年金掛金を納付しても自分が65歳になったときは年金制度が破綻して納付した掛金も貰えないからあほらしくて掛金を掛けない、という人が三分の一もいるのである。しかしこの人たちの多くは選挙には来ないから、選挙にその意思が反映されることはない。現時点でこのように言えるのであるから、後10年たって団塊の世代が年金受給者になったとき、年金制度を廃止あるいは支給の削減の方向での改革は絶対に出来なくなる。今が年金制度改革のラストチャンスである。
 本当から言えば、利害関係人には投票権がないのが議事原則であるが、国政選挙では投票に制限できる筈もなく、年金制度の改革はますます困難となる。
 私の持論は、年金廃止、掛金払戻です。どんな政党も年金制度の発展を公約し、廃止を言うものはいない。言えば年金受給権者からの反発を受けるからです。
しかし、40年前に年金制度を設計したときは、
  人口のピラミット型の増加
  経済の発展
が予定され、揺りかごから墓場までという社会福祉思想に魅力されて始まったものですが、以来40年を経過してこの年金制度でよいのか、疑問が出てきます。私はいっそのこと廃止してしまえと考えます。
年金制度を廃止して、掛金は利息を年5%つけて現金即金で返還することです。国民年金の方で数百万円、厚生年金の方で数千万円一時に返還となります。現在団塊の世代に支給されようとしている退職金何兆円を巡って、銀行、証券会社は投資信託、株式投資へと勧誘を強めており、この金余りがこれからの日本経済の発展の原資と期待されています。ここに年金の払戻しが何十兆円加われば、日本資本市場は驚異的に成長が可能となります。
いや待て、払い戻された掛金を食い尽くしたらどうなるのだ、という疑問が出ます。昔の時代、年金のない時代、誰も年金を貰っていなかった昭和の時代に戻るだけのことであり、心配ありません。払い戻された掛金があるから安心です。
昭和の時代と同じように家族と共に自分の資産を頼りに老後を生活し、なくなれば公的な生活保護を受ければよいのです。今でも年金を受給するより生活保護を受けた方が金額的にお得なのです。
過激な議論だと思われるでしょうが、続けます。

年金制度の過ち

1、年金は強制貯金、早死丸損
 年金制度は国民皆保険であり、20歳から65歳まで例外なく、強制的に徴収され、これは強制貯金です。途中で返してくれとか言えないのです。年金受給が始まる前に死亡したら、一円も支給はありません。死亡掛け捨て保険です。
 しかも25年間掛金を掛け続けることが条件であり、一日足らなくても年金は貰えません。
 このことは、国民の自由人生設計を妨害します。20歳で海外へ雄飛した方は、当然海外滞在中年金を納付しませんから、途中で帰国しても25年間要件を満たさなければ貰えません。現在国民の中で多くの国民が海外留学海外就職をして活躍しています。しかし年金制度から見ると、海外居住者は年金難民です。帰国したら浦島太郎です。髭が白くなっただけで国は何もしてくれません。

2、国民中間層の資産形成に役立たないし、貧富の格差解消にならない。
 年収300万円台の中間層が年金掛金の納付に一番困っており、未納率も高い。所得税は所得に応じて課税され、免税点があります。だから税制には貧富の格差解消機能があります。
しかし年金は免税点がなく、国民年金では貧困層も富裕層も等しく徴収され、受給も同じです。勿論国民年金では低所得者に対する免除の規定がありますが、免除された分に対応する受給はないのです。年金制度には貧富の格差解消機能がない。
年収300万円台の中間層は、所得税を取られ、年金掛金も取られます。差し引き自分の資産の形成に困難を来すのです。日本は自由主義で資本主義です。中間層の国民が自活できるだけの資産形成を出来るよう、国が支援する政策を取らなければ成りません。健全なる中間層の存在が社会発展の基礎です。貧富の格差の増大は社会不安の原因となると共に、政治混乱の原因となります。
私の持論は、年収300万円台の中間層に対しては、所得税も免税点以下とし、年金掛金もなしとして、年間300万円台を可処分所得とし、貯金が可能となり、自営業の開業を可能とし、マイホームを早期に取得できるように政策として仕向けるべきです。
フリーターという種族が増殖しています。マイホームを持つことが出来るという希望を与えられていないから、その日その日暮らしをし、貯金もせず、人生設計を築けずにいるのです。当然フリーターには国民年金未納者が多くなります。
現在年金掛金は年間16万6320円です。この徴収をやめて国民の可処分所得を増大させてやること、この分自由人生設計を可能にすることが必要です。こうすれば、国民は若いうちから勤勉に働き貯金を蓄え自分で老後を設計できるようになります。16万円の40年分は640万円です。金というものは、種銭と言って、貯めないと貯まらないが、貯まり始めると貯まるものです。今の年金制度は若い貧困層からも掛金を強制徴収して種銭も残さないのです。年金を止めれば、フリーターの貧困層が真面目に人生設計を始め、自活層として活躍を始めます。これが自由国家の体力となるのです。自分で老後設計を考え、決して生活保護に頼ることは少なくなるでしょう。
種銭まで奪う年金に反対です。

3、官僚は年金管理能力がない。
 社会保険庁では、年金記録を紛失していることが明らかとなり、自民党大敗の原因となりました。繰上げ納金の金が何処へ行ったか、横領の嫌疑があります。自分の在職時代いい加減な管理をしていても、責任を問われるのは退職後です。年金記録を紛失しても、コンピューターに入力し忘れても責任を現在追及されることはないのです。残業して今日の仕事を今日するという仕事のスタイルはしません。仕事が山積みでも定時になったらさっさと帰宅し、山積みの記録が明日どうなっていても責任感を覚えることはありません。
 社会保険庁現職トップは責任を取ってボーナス一部返上とかいいますが、既に退職している幹部の責任はどうするのですか。昔帝国陸海軍省が太平洋戦争敗戦の責任を取って廃止したと同じように、社会保険庁廃止ということをしたらどうか。

4、官僚は年金運用能力がない。
 グリーンピアという宿泊施設を何千億円も建設し、有り余る年金財源を利用して国民に低額の保養施設を提供したいとの謳い文句で始まり、当時は民営の観光・旅行業者への圧迫であると非難されていましたが、所詮は公務員のお仕事、私もグリーンピアに泊まりましたが、公務員は夕食を作ると帰ってしまう。冷めた夕食が並ぶだけ、夜間に頼みたいことがあっても誰もいない。頼んでも勤務時間外だからと断られる。サービスが悪いから、二度と誰も来なくなる。だから千円高くても民間の旅館へ行くようになり、グリーンピアは閑古鳥 潰れて当然
 グリーンピアは全部廃止となり、何千億円はどぶの中、勿体ない。官僚が旅館業を出来る筈もないのです。
 年金制度の効用として、集めた年金掛金を政府が財政投融資に回して、産業の発展を期するという大儀名分がありましたが、本当に役に立ったのでしょうか。誰も検討していませんが、不採算産業部門に回して焦げ付き赤字になったものが多数あるはずです。新聞は掛金の財政投融資について検討しませんが、絶対に赤字があるはずです。海外への援助資金OEDにも掛金が充てられていましたが、大統領の宮殿とか特権層の私腹を肥やしただけの結果に終わっているのも多いと思います。

5、生活保護費より安い年金
 国民年金は毎月6万6千円、年間80万円です。生活保護費より少ない。最低賃金よりも低い。だから真面目に働いて年金をかけ続けるよりも、腰痛が痛くて働けないと言って、生活保護を貰った方がお得なのです。正直者が馬鹿を見るという制度は国民の信頼を得られません。だから国民納付率が3分の2を切るのです。年金制度は既に民意を失っています。

6、年金未納者と年金受給権者との間の格差の増大、平等原則の崩壊
国民年金の給付は3分の1は税金、3分の2は掛金で賄います。年金全額免除の人は、一円の掛金を納めていなくても、年間80万円の3分の1の26万4千円は貰えます。しかし最初から未納の人は貰えない。
国民年金を未納にするかしないかはその国民の判断です。しかし厚生年金の場合は、事業所で厚生年金に加入しなければならないのに加入していないのもある。転職を繰り返すと納付が断絶する。加入していても、記録の紛失により加入が認められないこともある。かくして年金を貰える人と貰えない人の格差が激しくなり国民の不満が高まる。

7、貧困層には生活費にならず、富裕層には小遣いにもならない。
 毎月6万円余貰っても、はした金です。貧困層は生活できないし、富裕層には小遣いにもならない。最近政府から富裕層には年金を支給しないとの方針も提案されているが、年金が強制貯金なのであるから、支給打ち切りは論外である。
 このように一人一人の国民には、対して役に立たない制度を莫大に費用を使って運営している。社会保険庁の人件費が最たるものだか、勿体ない。巨大なコンピューターが必要だが、これも金が掛かる。

8、人口統計に予測が付かない。
 40年前人口統計から考案された年金制度であるが、少子化により破綻が発生している。政府は少子化の歯止めに期待を掛けているが、難しい。納めた掛金の運用利回り金で年金を貰うという制度ではなく、元気な世代で老齢世代を養うという制度目的の変更をしなければならないことになる。若い世代はこれを拒絶するから、年金未納が止まないのである。
 そもそも、40年先を予測できるのか。国家の経済予測は10年先が精々である。予測の出来ないことを無理にするべきではない。

9、年金制度は思想的には、どう考えるべきか。
 小さな政府、という自由主義から言えば、年金制度は国民にとって大きなお世話である。税金だけは政府を養うに足る最小限度の負担として我慢するが、それ以外はお断りである。ましてや政府が強制貯金で徴収して老後まで運用してあげると言っても、政府は信用できないというのが自由主義、夜警国家論である。
 国民の老後まで政府が生活保障するという思想は社会主義、正確に言うと社会共済思想であり、政府による国民統制を意味する。
 自分の人生設計は自分でする。老後設計も自分でする、そうした国民を多数育てることが、自由主義政府の役割なのです。
 勿論、不幸な人も少数いますから、生活保護制度は用意しておく必要があります。現在の生活保護制度は窮屈で申請に行くのを躊躇する傾向があります。しかし貧乏は恥ではない。運が悪かっただけのことである。
 福祉というものには、必要性の原則がある。保護すべきものを必ず保護し、保護すべきでない者は保護しない。何らかの理由で貧乏で食えない状態の人には必ず保護をすべきである。これを理解していないと、自由主義は強者の自慢話に堕してしまう。

10、巨額の掛金が集められ、何処へ運用されているかも不明のまま、年金を管理している官僚への人件費は膨大、統計は信用できず、将来の掛金利率も予測不能である。
 一旦、年金を廃止して、掛金に利息を付けて国民に返還したらどうか。さすれば社会保険庁を廃止でき、官僚への人件費支払いも節約できる。団塊世代への退職金よりも巨額な経済効果がある。産業資本への投資、株式市場への投資が活発となる。経済効果が大きい。
払戻し年金で当分生活していって貰い、駄目な人には手厚い生活保護を用意する。その後10年掛けて年金制度をどうするか若い世代の人に考えて貰うことである。
 そもそも、昭和の時代に作った年金制度は平成の世代の人の同意を得ていないのである。法律では何でも時効は最長10年、40年も先を予定する制度は、予測不能であり、機能不全を来たすから、もともと無理がある。
 年金廃止、掛金払戻しを言いたい。