歴史評論9−24   名古屋空襲と戦犯裁判
2012.9.12
         
14、将来への教訓

@第二次大戦後も戦争が止むことはない。第一次大戦と第二次大戦の間を戦間期と呼び、国際関係史の大きなテーマになっている。もしかすると、今も戦間期かも知れない。戦間期に国際連盟が成立したものの戦争防止の役割を果たし得ずに終わった。今の国連は平和の役割を果たしているだろうか。
 政治学者が世界平和の為に提案することは多いのであるが、私は法家としてひとつ提案したい。
 国連で兵士用の軍事教科書を作成し加盟国軍隊の統一教科書とすることである。
 その教科書には、ハーグ陸戦法規空戦規則からジュネーブ条約まで網羅し、捕虜の心得を記載し、無差別爆撃や非戦闘員への攻撃を禁止し、上官の命令に従ったことは免責の理由にならず、戦犯裁判で処罰されると明記することである。
 BC級戦犯裁判で処刑された多くの日本軍兵士の教訓をかくして生かしたい。北朝鮮はこの教科書に反対するであろうから制裁を発動するか、空から頒布してやればよい。兵士の反抗、反乱による違法行為抑止力が必要である。
 
A2003年にイラク戦争があった。イラクのサダム・フセインが大量破壊兵器を貯蔵しているとして、国連は何度も査察を要求し、イラクは応じたのであるが、まだ隠しているとして英米が攻撃し一月でバクダットを陥落させフセインを逮捕処刑したのである。
 戦後イラク全域で捜索が為されたが、結局大量破壊兵器は発見されなかった。既に湾岸戦争の直後の1991年に廃棄されていたのである。かくしてフセインは無実の罪で処刑されたことになる。(正確に言うと、フセインを処刑したのはフセイン政権転覆後の新政権が裁判で処刑したのであるが、傀儡政権であり、ブッシュが処刑したに等しい)
 主権国家に攻撃を加え、元首を死刑にするということは、侵略そのものである。スペインによるインカ帝国侵略以来である。英国も清朝に対し、アメリカもハワイ王朝に対し元首殺しまではしていない。フセインの非人道性については非難されることがあるが、それはイラク国民の問題であり、外国が武力でイラクを侵略できる理由とはならない。
 しかも、国連がだしに使われた。イラクが査察に応じないと安保理は何度も非難決議をしたが、攻撃したのは国連軍ではなく英米軍であった。国連の平和機能が英米により犯されている。

B北朝鮮では二度も核実験が行われ、実戦配備が可能になりつつある。アメリカのオバマのいらいらが増してきている。イラクの大量破壊兵器がイラク攻撃の理由となったが、核兵器は大量破壊兵器の最たるものである。金正日はフセインと同じ運命を辿ることに気が付いているであろうか。
 イランでは核開発が進み、イスラエルはイランの核工場を破壊する作戦を実行しようとしている。前例はある。1981年イスラエルはイラクの原子炉を空襲して破壊した。この時国連安保理は非難決議をしただけで制裁処置をせず、結局うやむやになった。国連制裁に実効性がないから、イスラエルは又やるだろう。
 オバマは思うようにならない金正日に腹を立て、オバマの世界統治能力への不信感が国内から巻き起こることに危惧し、チキン臆病者ではない強い大統領を演ずるため、ブッシュやイスラエルの前例を踏襲するであろう。ブッシュは薄弱な開戦理由にもかかわらずイラク攻撃に踏み切ったのは2001年9月11日テロに対する強い大統領を国民に示すためであった。

 こうなるであろう。
 アメリカは安保理を動かして北朝鮮の海上封鎖制裁を発動させ、日本に協力を求める。日本は海上船舶臨検捕獲法を制定し、海上自衛隊は東シナ海で北朝鮮船舶の臨検を始める。ある北朝鮮貨物船を臨検するとスェーデン製ステンレス管を搭載していた。ウラン濃縮に利用するものと判断し拿捕して佐世保への回航を命ずる。しかし船長は予備役の海軍軍人でありヤワな男ではなった。冷暖房用の配管であると主張し、日本臨検士官をボートへ追い返し逃走しようとするが、海上自衛艦に阻止され、拿捕される位ならと自沈し、船長は船と命を共にする。金正日はこの船長の勇敢さを讃える演説をする。北鮮では反日官製デモが大規模に行われ、南鮮では反共よりも反日デモが組織され、統一反日がスローガンとなる。
 1941年12月8日真珠湾の後、アメリカの港にいたドイツ商船は沖合に出て拿捕しようとするアメリカ艦艇の目の前で自沈したのだ。
 アメリカは北朝鮮へ核実験の停止と核査察を要求し最後通牒を送りつける。金正日は応じないから、核工場とミサイル基地へトマホークを打ち込む。核を搭載するかは、オバマがチキンハートなのか否かにかかわる。通常弾頭であれば撃ち漏らしは多い。
 すると、北朝鮮はアメリカに対して宣戦布告をしたうえ、日本に対して「朝鮮民主主義人民共和国はアメリカ合衆国に対して宣戦通告をなせり。日本国は両国の戦争に対して中立を宣言するか否か、24時間以内に返答されたし。遅延は許されない」と通告する。
 首相ら閣僚が狼狽して閣議をするも大混乱のまま時間だけが経過する。御前崎沖のトヨタ自動車運搬船の前に北朝鮮潜水艦が浮上して停船命令を出して士官が移乗し、航海日誌を差押え「積み荷が戦時禁制品であるから、拿捕して北朝鮮の元山まで連行する。元山には戦時船舶捕獲審検所を開設したから異議があればそこで述べよ」と通告し、船長に銃を向けて北朝鮮への回航を命ずる。
 海上自衛隊の護衛艦が回航を阻止しようとして進路に割って入ると、潜水艦は「敵対行為と認め、交戦権を行使する」と信号して艦橋に戦闘旗を掲げ、雷撃して戦争となる。
 憲法9条に「交戦権はこれを認めない」と書いてあるが、皆さん交戦権とは何か良く分かっていないと思う。交戦権と言う言葉はこのように使うのです。
 北朝鮮から核ミサイルが発射され、沖縄の米軍基地を全滅させる。
 東京湾に北朝鮮潜水艦が浮上し「われ核兵器を搭載せり」と信号する。
 総理は狼狽して首都の甲府移転を決意し甲州街道を走るが暴徒に囲まれて殴り倒される。
 日本が中立宣言をすれば良いではないかとの意見もある。しかし中立宣言すると中立義務が発生する。国内にある米軍基地を撤去させる義務が発生し、戦時禁制品の貿易が禁止されるのである。鉄と火薬と食料は禁制品であり、木材は自由品である。何故食料までと思われるが兵糧になるからである。自動車は軍事に転用可能であるから禁制品となる。日本が中立宣言すれば日米貿易は停止となってしまうから中立宣言は出来ない。支那事変のとき、日本と中華民国の双方が宣戦通告をしなかったのは、アメリカとの貿易を継続したい一心からであった。
 フセインの部下達は戦闘意欲に乏しく一月でバクダットを明け渡したが、北朝鮮兵士は違うだろう。数年前の密航船と巡視船との海戦では携帯ミサイルと機関銃を発射し全員自決している。密航船が沈んだとき乗組員の何人かは救助されることは出来た。しかし一人も救助されなかったということは全員捕虜にならないために自決したのである。更に数年前北朝鮮潜水艦が韓国沿岸に工作員を上陸させたとき機関が故障したようで、乗組員が上陸し全員が銃で秘密保持の為に射殺されている。全員を殺した工作員一人が38度線を越えて北へ逃げ帰っている。
 こうゆう軍隊であることを直視しなければならない。日本の神風特攻隊は1.2年で作り上げたが、北朝鮮は朝鮮戦争の人海戦術以来この人命無視の特攻精神でやっており、年期が違う。自衛隊には実戦経験者はもういないが、北鮮軍にはベトナム戦争帰りがごろごろいる。日本は北朝鮮と戦争すべきではない。犠牲者が膨大となるし、戦っても何の実益もないからである。チキンと呼ばれて興奮し世界統治者になりたいブッシュやオバマに付き合っていると大変なことになる。

 戦時船舶捕獲審検所というのは1909年ロンドン海戦法規宣言に規定があり、太平洋戦争で日本は佐世保と横須賀の鎮守府軍法会議内に設置し、戦争中に拿捕した敵国・中立国船舶の拿捕の有効無効を審検した。拿捕の無効と審検したときは船舶を解放している。昭和30年代まで審検が継続した事件もあった。南京政府籍の貨物船を拿捕した事例では、中立国になるがギリシャ国旗を掲揚していたことを理由に拿捕は有効と審検した。ギリシャは対日宣戦をしている。
 オランダ病院船を拿捕して日本の病院船として転用した事例では、日本は病院船が日本軍艦の停船命令に違反して逃亡したことを理由に拿捕の有効を主張したが、病院船は敵国船であっても拿捕免責特権があり、論争となり、日本が昭和20年8月16日証拠隠滅の為に舞鶴で自沈させたことが暴露され、最後は日本がオランダへ1億円の補償金を支払って示談解決している。審検所での裁判では、戦前の有名な弁護士、岩田宙造・海野晋吉らが拿捕された船主の依頼で代理人を勤めていた。戦前戦中では、弁護士は海事法で儲けていたのである。