生存権(26条)
現行条文
 @すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 A国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

改正理由
 生存権は、国王の詫び証文時代には、なかった概念である。
 かっては、国民の生活に国家が干渉することを排除するを規定するのみであり、与えるにしても、奪うにしても、国家から国民への干渉を排除することが絶対であった。しかし、貧困、病気その他あらゆる原因により生活困難に陥った国民を保護救済することが国家と国民の責務と理解されるようになった。
 国民が国民相互間で新国家を建設する契約たる憲法を締結するようになって以降、時代背景から、生存権が生まれた。社会権とも言う。産業資本主義がもたらす貧困から国民を救済することが、国家の義務と理解され、反対に救済を受けることが国民の権利と理解されたのである。そこには、貧困の本質が本人の責任ではなく、社会体制が不可避的にもたらすものとの理解が前提である。
 修正資本主義、社会主義と思想の源は異なるものの、社会権思想として20世紀初頭から世界に普遍的に広まった。
 1919年ドイツワイマール憲法は、「経済生活の秩序は、すべての人に、人たるに値する生存を保障することを目ざす、正義の諸原則に適合するものでなければならない。各人の経済的自由は、この限界内においてこれを確保するものとする」と規定していた。
 この生存権の規定は、社会福祉、生活保護、医療保護、失業救済、児童保護、母子保護等のあらゆる福祉規定の根拠となるものであり、改正の必要はない。
 しかし、条文に「最低限度の生活」と規定するのは、いかがなものであろうか。生活保護世帯へは、最低限度の支給をすれば足りる、或いは、最低限度の支給をしなければならない、と読み替える解釈が出てくる、或いは実務の運用がなされるとすれば、社会福祉の後退となる。
 また、国民に生存権があることは規定されているが、国家に対して具体的な保護請求権があるのか、条文には明記されていない。よって、国民の国家に対する保護請求権を明記すべきである。

( 憲法改正案 )

 @すべて国民は、健康で文化的な生活を営む権利を有し、国に対して、適切な保護を請求する権利を有する。
 A国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。