宣戦布告とみなす 20061018 |
金正日が核実験を行い、アメリカの金融制裁・経済制裁は宣戦布告とみなすと発言している。どこかで聞いた台詞である。アメリカ、イギリス、中国、オランダは、昭和16年日本の中国侵略を非難して対日経済制裁を発動した。ABCD包囲網と言われる経済封鎖網であり、これにより日本は石油と鉄の輸入が不可能となり、日本海軍の艦艇は燃料切れで活動不能直前の状態となり、太平洋戦争開戦の原因となった。当時の東条英機首相、山本五十六連合艦隊司令長官は、アメリカが石油を売らないのならば、インドネシアのオランダ石油を奪取すればよいと決断したのである。アメリカのハル国務長官は、ハルノートと呼ばれる書簡を日本に寄越して、中国から撤兵しなければABCD包囲網を発動すると予告したが、日本はこのハルノートを宣戦布告と見なし、真珠湾攻撃で切り替えしたのである。東京裁判でも東条英機は太平洋戦争は侵略戦争ではなく、アメリカのABCD包囲網は宣戦布告に等しく、これに対する防衛戦争であったと主張し、太平洋戦争擁護論者はこれに同調する。 金正日は、偽ドル製造、麻薬密売の資金洗浄をマカオの銀行でしており、被害者のアメリカが怒ってマカオの北朝鮮銀行口座を封鎖したのである。もともと悪いのは金正日であるのであるが、金正日は常に自分は正しく、他人は悪いと信じている。 中国を侵略したのは、日本であり、撤兵せよと主張する世界世論は正しいのであるが、東条英機首相にとってみれば、実利なく撤兵することは死んでもできないことであり、撤兵要求は宣戦布告と同じと理解したのである。 金正日も東条英機首相も、宣戦布告と見なす、と叫んでいるのである。東条英機首相は実際に太平洋戦争を開戦してしまったが、東京焼け野原の結末を信じていなかった。東条英機首相も山本五十六連合艦隊司令長官も勝つことはなくても負けないと信じていたのである。二人とも陸軍・海軍大学の優等生であるのに、世界軍事力学を読み誤っていたのである。 金正日はどうであろうか。 金正日は負けないと信じている。 そして、アメリカも勝てないと信じている。ここが問題だ。 昭和25年から28年の朝鮮戦争では、金日成は二度ソウルを陥落させ、アメリカも二度ピョンヤンを陥落させたが、アメリカ軍は朝鮮北部山岳地帯へ進軍すると地上の塹壕戦で必ず停滞してしまい、金日成を打倒できなかったのである。マリアナ島レイテ島ルソン島沖縄で日本軍を壊滅させたアメリカ軍でも朝鮮民主主義人民共和国軍には勝てなかったのである。山岳地帯での戦闘は個人の戦闘能力が問われ、単純な物量計算のみには従わないのである。装備優秀なソ連軍でもアフガンゲリラ軍に勝てなかったことと同じである。余分なことを言っておくが、大日本帝国陸軍は本土決戦を山岳戦で行えば結構互角に戦ったと思う。 現在アメリカはイラクで手を焼いている。撤退したくて仕方がないのが本音である。ここで金正日と本格的に戦うとすれば、アメリカ兵100万人を派兵しなければならないが、政権末期のブッシュにはそれだけの総動員能力はない。したら共和党が崩壊する。 金正日は世界を眺めて余裕がある。インドもパキスタンも世界の反対を押し切って核開発をし、当座は経済制裁を受けたが、今や昔話で、経済制裁も胡散霧消し、核保有国クラブの正会員に格上げされている。インドは今や経済発展最たる国になっている。 金正日が冷静心を維持できれば当分戦争はない。しかし金正日が短期激情型であれば、戦争は近い。金正日が優等生だった東条英機首相、山本五十六連合艦隊司令長官を超える人物であることを祈りたい。日本人が平和でおられるかは、金正日の脳みそと性格だけにかかっている。 怖いのは、金正日が、南米ペルーゲリラ、チェチェンゲリラ、アルカイダと共同戦線を取ることである。ペルーの日本大使館占拠・国会占拠、モスクワの劇場占拠、無差別自爆テロをお手本としたらどうなるか。金正日は在庫の核兵器をアルカイダに売却し、アルカイダはニューヨークで爆発させるであろう。貿易センター攻撃と同じことである。 金正日のミサイル実験は失敗している。核兵器を完成させても運搬のミサイルの精度はたいしたことはなさそうである。東京を狙っても、 10キロ外れれば効果はない。だから金正日は玉数の少ない核兵器をミサイルに搭載することはせず、ソウル・東京・沖縄・ニューヨークに核兵器を隠して持ち込むであろう。ピョンヤンから国際電話で爆発させた方が効率がよい。アメリカの核ミサイルは常にピョンヤンに向けられているから、核兵器を持ちこむのは国家の自衛と言い放つであろう。しかも持ち込み部隊にアルカイダを用いる。国籍不明の非正規兵の戦いが始まり、誰が敵であり、味方なのか、分からない状況下で文明の混乱が発生する。 金正日は危なくて手がつけられない。 世界は経済制裁を推し進め、特に貿易を全面的に停止し、鉄と石油と火薬を売らないことである。経済を疲弊させ、三流の農業国へ落とすことである。 しかし、大韓民国がこれをやれるかが、分かれ道である。 |
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