住友信託と三菱UFJの裁判で和解金25億円 20061122 |
住友信託銀行と三菱UFJフィナンシャルグループの経営統合撤回裁判で、三菱UFJが和解金25億円を支払った。 両銀行が経営統合交渉をしていたが、最終的に三菱UFJが断った件で住友信託銀行が三菱UFJを訴えた裁判では、一審東京地裁は請求棄却としたが、東京高裁は和解勧告し、三菱UFJが25億円支払うことで21日和解を成立させた。交渉途中の撤回は信義則に違反し、住友信託銀行が投じた交渉費用を損害賠償すべきだとの東京高裁の判断を受けてのことである。 それにしても、25億円である。そんなに交渉費用がかかったのか、疑念である。経営統合にかかる費用は、殆ど証券会社と弁護士・会計士に対する支払いであろう。これらが相当暴利を得ていることは知っているが、25億円にもなるまい。後は自行の担当者の人件費だけであろうから、25億円は高すぎる。統合を見込んで新看板とかを何億も注文したというのであろうか。 東京高裁が25億円を払ってやれと和解勧告するくらいであるから、三菱UFJ側には撤回について非難されるような信義則違反があったと見られる。 ならば、三菱UFJの取締役は違法取引をしたことになり、会社に対して損害賠償をすべきである。 私は昔ホテル会社の買収案件で紛糾した裁判を担当した。 ある不動産会社がホテルを経営する会社を買収しようとした。その会社はホテルの用地建物を所有し、オーナが一人株主であり、引退するから売りに出した訳である。不動産会社は会社買収に乗り出したが財務内容について調査すべきとの方針であり、オーナーは他からも買い手が登場しているから、早く結論を出してくれとの要求であり、結局会社売買の予約契約書を締結し、手付金として1000万円を納め、手付け金倍返し条項も入っていた。不動産売買契約書のスタイルをそのまま踏襲した予約契約書であった。この段階では私は関与せず、予約契約書には「ノーペナルティでの撤回自由」の条項が落ちていた。 不動産会社は調査役を派遣し一月間ホテルを調査した結果、過去の決算書の売り上げ・経費について信頼が置けず、簿外債務の存在の疑いを感じて買収を断念し、手付金の返還を求めた。オーナーは反対に手付金没収と撤回により会社を売却できなかった逸失利益の損害賠償請求を求めて不動産会社を訴え、不動産会社も手付金返還の反訴を提起した。 私は不動産会社の代理人として裁判に臨んだが、手付金の性格を、ホテル会社の経営・財務が適正か否かを調査するための証拠金と位置づけ、一定の調査期間の後、適正不可と判断したときは、無罰ノーペナルティで撤回でき、手付金の返還も当然とし、競売申し込みの入札保証金と同じ性格と主張した。 ホテル会社の弁護士は、不動産売買契約の手付けと同じ性格で、不動産会社の都合による撤回であるから、手付金没収は当然で損害賠償請求も出来ると主張した。 裁判では、調査役を証人尋問し、経営と財務の調査に当たり適正についてオーナーとどんなやり取りを重ねたかを詳細に立証し、この調査如何では買収撤回もあり得ることをオーナー自身予期しえたことを証明した。 一審は不動産会社の勝訴、ホテルオーナーは控訴して高裁まで行ったが、高裁も同じ判断で、1000万円の分割返済で和解解決した。 三菱UFJの弁護士は一体どんな判断で25億円の支払い案を受けたのか、疑問である。私の作戦でやれば0円ですんだ筈である。多分弁護士の判断ではなく、三菱UFJの取締役の判断であろう。銀行員は世間体を恐れ裁判をやめたくて仕方ないのであるが、代表訴訟が怖いから、高裁がいくらか提案してくれれば、いくらでも乗りたかったのである。25億円も捨てて勿体無い。自分の金ではないから、大判振る舞いである。高裁が50億円と言っても、呑んだであろう。取締役として無責任である。 株主代表訴訟を提訴してみるべきである。 もう一つ論点がある。三菱UFJは住友信託銀行と統合契約書を仮調印したとき、本調印まではノーペナルティーで撤回できるとの条項を入れていたかである。入れていなければ、その契約書を作成した、或いは点検した、担当行員・取締役・弁護士は過失があり、会社に対して損害賠償責任がある。 常識で考えても良い。判子付くまでは撤回取消自由なるが商取引の世界である。買ってくれると言ったじゃないですか、と言っても、買うと書いた契約書に判子を付いたかと言い返せば通るのである。仮契約書はあくまでも仮であり、本契約書ではない。 統合交渉の仮契約書というのは、私の担当した案件と同じく、統合するか否かを調査するための契約書であり、調査如何によってはノーペナルティーで撤回もありうるのである。 統合する気もなく、ただ相手の秘密資料を知りたくて仮契約書を締結したとか、結論を先延ばしして、他の優良な統合相手との交渉を妨害したとか、特別のことない限り、撤回は自由であり、損害賠償責任を負担するはずがない。 スティールのTOB価格は700円、日清食品のTOB価格は870円、スティールはTOB価格を引き上げない限りTOBに勝てない。元々スティールかTOB価格を低く提案したところからしても、引き上げする気がないであろう。 スティールは日清食品のTOBに応じて買い集めた明星株を売ることになるであろう。スティールは大儲けできることとなる。この大儲けの結果は、日清食品が後発的TOBを仕掛けたことによる偶然の利益なのか、出来芝居なのか。 スティールは日清食品の6.2%の株主である。株主権の対価としての利益供与ならば違法である。どうして日清が高額すぎるTOBを打ったのか、背景次第では、刑事事件である。 |
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